【クレージージャーニー】謎だらけの茶碗を再現させる旅-曜変天目茶碗

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陶芸ってまさに芸術家って印象がありませんか。
土と水といろいろ混ぜてこねて
形作って
色つけて
長い時間かけて焼いて・・
思ったように出来上がってないと
「パリーン」と叩きつけて割ってしまうイメージがありました。

宇宙

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現存する曜変天目

今回は、まさに私のイメージの陶芸家さんです。
800年前に作られた「曜変天目茶碗」の再現に挑む陶芸家・長江惣吉さんの旅です。

この曜変天目茶碗は日本でいうと鎌倉時代の頃に、中国で作られた茶碗です。
黒い茶碗で内側に光を当てるとまるで星のように光って本当に宇宙のようです。

この曜変天目茶碗のつくり方は伝わっておらず、
再現できた人もいないのです。

この茶碗は世界に3つしかない貴重なものです。
その3つとはすべて中国ではなく、日本にあります。
不思議ですね。
3つとも国宝として所蔵されています。

静嘉堂文庫(東京)
世田谷区岡本の専門図書館・美術館です。曜変の中でも最高とされている「稲葉天目」があります。
徳川将軍家のものだったと言われています。

藤田美術館(大阪)
都島区網島町の美術館です。春と秋に企画展の形で開館しています。
こちらは同じ徳川でも水戸藩に伝えられたものといわれています。

大徳寺籠光院(京都)
北区紫野の寺院です。ここは国宝や重要文化財を多く所有しているのですが、
拝観を受け付けていないので見ることができません。

謎だらけの曜変天目茶碗

本当にきれいな茶碗で、見ていると吸い込まれそうになる不思議な茶碗です。

外側は普通の真っ黒な茶碗です。
しかし、内側は真っ黒な地に星のように浮かぶ瑠璃色の星紋
眺める角度によって変わる光彩が浮き出ています。
これが、宇宙を閉じ込めたような美しさといわれています。

曜変天目は「星紋」と「光彩」があるものと考えられています。

「同じものを作るのは不可能だ」といわれているこの美しい茶碗の再現を
23年間挑戦し続けているのが長江さんです。

長江惣吉という名前は代々引き継がれているもので、現在9代目の長江惣吉さんとなります。

曜変天目で分かっているのは、この2点のみです。

800年から900年前の南宋の時代に100年間のみ作られていた

中国の福建省「建窯」で作られていた

どのように作られたか、どうして日本にしか残っていないのかなどは謎のままです。



曜変天目茶碗の100%再現を目指す

もちろん23年間作り続けてきて、曜変天目に近い作品は出来上がっています。

素人目には、再現できているのではないかと思われる作品です。
しかし、長江さんは納得しません。
納得しないものは売れません。

やはり芸術家は自分に厳しく、及第点を取れるものでないと商品として出せないんですね。

そして合格基準に満たないものは、バリンバリン割っていきます。
長江さんの合格基準はすごく高そうです。

そして長江さんは曜変天目の100%再現のため、まず土から取り寄せます。
建窯の土を400万円かけて80トン輸入します。この土の量は、17万個作れる量です。

窯を再現するため、300坪の土地を購入して龍窯を作ったりもしています。
(ただしこちらは現在使っていません。火を使った窯でも光彩が出ることが分かったからです)

今まででこの再現のために1億円以上を使っています。
父親の研究を引き継いで、再現を挑戦し続けているんです。

曜変天目茶碗の再現行程の旅

そんな長江さんの工房は、愛知県瀬戸市にあります。
すごく大きくて立派なお宅の近くに作業場があります。
道具が溢れんばかりの広い工場で一人で作業を進めています。

本当に孤独な戦いですね。

1.粘土づくり
まず粘土を作ります。
今回は2種類の土を混ぜて使います。
水を入れて機械で混ぜたものを濾します。

見てると肉体労働ですね。

濾したものをいくつかの器に分けて、粘土になるまで12時間待ちます。

粘土になったらこねて、空気を抜きます。

2.成型
ろくろを使って成型していきます。
大きさまで再現しようとしているので、整えるのも大変です。

3.半乾燥
2日間半乾燥します。
乾燥したら削って、形を整えていきます。
重さまで再現できるように調整し、3日乾燥させます。

4.素焼き
そしてやっと素焼きに入ります。

5.釉薬を塗る
釉薬(ゆやく)という器をコーティングするものに浸します。
そして0.22ミリの厚さになるように調整します。

この釉薬の配合を毎回変えて計算しているのですが、その研究ノートは18冊にもなります。
これが研究結果ですね。

6.焼成
再度焼きに入ります。2日間は2時間ごとに窯の温度を確認します。

7.火止め
窯の火を止め、冷やしに入ります。
これが5秒でもずれると全く違う結果になるという大事なところです。

焼成からは、繊細な集中する作業になるのでカメラ撮影NGでした。

8.窯に蛍石を投入
窯が冷えてきたら、蛍石を投入します。
これであのキレイな光彩が入るのです。

9.窯から出して完成
窯から取り出します。

今回14日かけて完成した曜変天目です。
ちゃんと星紋も光彩も入ってます。
でも、足早に工場へ戻った長江さんは、後を追うカメラが追い付かないところで
「パリーン」と割ってしまいました。

やっぱり合格点もらえなかったです。
キレイだったのにな。

でも長江さんの高い合格基準に達していなかったのは仕方ありません。

これからもチャレンジし続けていくという長江さん。

松本さんも言ってましたが、まるで冒険家のようです。
長い長い旅の一部を切り取って見せられたような再現工程でした。

淡々と見極めて、失敗作は即割ってしまう。
長江さんの高い合格基準は、芸術家としてのプライドを見せつけられた気がしました。



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独立時計師 ネジから部品からすべてを一人で作ってしまう時計を作る人です。 分業ではなく、すべてを作るんです。 小説で「独立時計...
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